【PDF】R.ガムビーニ/J.プリン『初級講座 ループ量子重力』

ループ量子重力は弦理論と並ぶ量子重力理論の候補であり,弦理論では重力を他の力と合わせて弦として統一的に扱うのに対し,ループ量子重力ではひとまず重力のみで量子化を試みる.
また,ループ量子重力では弦理論のように高次元空間を仮定しない.

ループ量子重力では空間が離散化されていると考える.
例えば空間の中に適当な領域を思い描き,その領域を連続的に変形していくと,常識的には領域の体積や表面積は連続的に変化する.
ところが理論は量子論に基づいており,領域が持つ本当の体積や表面積はその固有値として計算される.
実は空間には固有状態としてネットワーク構造が与えられていて(ループの語源),体積は領域に含まれるネットワークの頂点の数で決まる.
このため領域を変形しても,中の頂点の個数が変わらなければ体積は一定のままであり,ちょうど領域の境界が頂点にさしかかって,新しい頂点が領域の中に取り込まれると,領域の体積が不連続的に増加することになる.
これは空間が離散的であることを意味していると解釈できる.
表面積も同様に,表面を貫くネットワーク線の数で決まっていて,不連続的に変化する.
もっともネットワークの網目は極めて細かく,「プランク長さ」のオーダーなので(原子サイズに比べても極めて小さい),こうした不連続性はマクロには見えてこない.
(※ただし「空間におけるスピン・ネットワーク」と言うとき,既に空間が生成される前から(連続的な)空間の概念が密輸入されていることになる.しかしながらスピン・ネットワークは抽象的なグラフであって,空間の中にあるのではなく,正しくは空間そのものである.)

空間が離散化されているということは,粗いイメージとしては,この世は究極的には点描画やピクセル画のようなものだと言えよう.

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